小学生の頃、ある冬の朝に僕は思った。
早くジジイになりたいと。
なぜなら、僕はこれから寒い中を学校に行かなければいけないのに、ばあちゃんはコタツに入ってゆっくりしているのだから。
ジジイになれば僕もコタツに入ってゆっくりしていられると思った。
だが、どれだけ僕が早くジジイになりたいと願っても、突然70年後くらいにタイムスリップしてジジイになることはできない。
小学校のあとは中学校へ行き、さらに高校や大学に行ったり働いたりする。それを何十年もやって、やっとジジイになれる。それが現実だ。
小学生でもわかる。
だから僕はジジイになるまでの70年という現実をどうやって楽をするか、どうやって楽しむかを考えることにした。
しかし世の中の大半の人はそうではないみたいだ。
現実である普段の日常のほとんどをストレスを溜める時間に費やし、残りのわずかな時間でそのストレスを発散しようとする。
1年のほとんどを行きたくもない会社へ行き、年に数回だけ休みを取って旅行へ行く。
自分が生活している現実世界よりも、アニメやゲームなどの架空の世界に憧れる。
食事管理や運動はしないのに、自分は太りやすい体質なのだと嘆く。
人生の大半を我慢をしながら生活し、残りのわずかな老後に楽をしようとする。
そして自分が努力をしていないという現実を受け入れようとせず、自分には才能や運がないという妄想をする。
現実逃避が大好きな大多数の人たちは、現実には興味はないし、正論や真実など求めていない。
彼らが求めているのは、自分に都合の良い嘘や虚構だけだ。
みんな自分の中の妄想の世界を生きたいと思っている。
なぜ今ある目の前の現実を良くしようと思わないのだろうとは思うが、まあ、嘘や虚構というものが僕らホモサピエンスの強みでもあるので、人間とはそういうものなのだろう。
みんなファンタジーが大好きなのだ。