ジュリオ・セザールをえない

ジュリオ・セザールをえない

かつてジュリオ・セザールという男がいた。

セリエAのインテルに所属し、当時、世界有数のゴールキーパーとして活躍したサッカー選手だ。



弟に20万払うと決めた。毎月だ。

僕はフリーランスで仕事をしているが、人を雇う気はなかった。

なぜなら自分1人でも自分が生きていく程度には十分稼げるので、わざわざ人を雇うなどという面倒臭いことをする必要はないと思っていたからだ。そんなリスクを背負う必要はない。

でも、弟に20万払うと決めた。それは弟が会社を辞めてしまったからだ。

多少僕が発破を掛けた部分はあったので、その責任を取ろうという気持ちもあったのだろう。

そして周りからは、なんて優しいお兄さんなんだと言われる。

だが、実際はそうではない。

僕はただ、売上をもっと上げる、という新しいことに挑戦したかっただけだ。

自分1人で自分が生きていく分を稼ぐのは、今後もおそらく続けていける。

でも人を雇ってその給料を支払うというのは、いつまで続けていけるかわからない。

当たり前だが、弟を雇ったからといっていきなり売上が上がるわけではない。

仕事をもっととってくることができたら売上が上がるのだ。

仕事をとってくるまで最初は、ただ自分の毎月の収入が今までよりも20万減ってしまうだけだ。

そして、仕事をもっととってこれるという保証などどこにもない。

しかも弟に仕事を教えながらなので、20万円分僕が楽できるということもない。

前より忙しくなっているのに、収入が20万減っている、意味がわからない。

もちろん20万程度なら減っても自分が生きていけるくらいには収入があったから、その判断をしたのだろう。



だが、人間とはやらざるを得ない環境を作らないとやらない生き物だ。

なので、僕はその環境を作りたかった。

弟に20万払わなければいけないということを言い訳にして、その環境を作りたかったのだ。

どうすれば上手くいくかなんてことは、みんな知っている。

痩せるには食事管理と運動をすればいいだけ。

人間関係を良くしたかったら、相手に優しくして、ウソをつかず、誠意を持って接すればいいだけ。

たくさん稼ぎたかったら、ビジネスやお金のことを勉強して、頑張って働けばいいだけ、挑戦すればいいだけだ。

そんなことはみんなわかっている、でもみんなやらない。

なぜなら、みんなやらざるを得ない環境にいないからだ。

痩せたいとか稼ぎたいとかみんな言うけど、結局みんなやらない。

だから僕は、弟に20万払わなければいけない状況というのは、チャンスだと思った。

しかも弟は、結婚していて、子供もいて、持ち家も持っている。これから先もずっと支払い金額が20万というわけにはいかないだろう。

仮に月35万払ったとして、年間で大体平均年収の420万になる、将来的にはせめてそれくらいは払いたいものだ。

僕の分と合わせるとまあまあ売上を作らなければならない。

もう後戻りはできない、やらざるを得ないのだ。

そうせざるを得ないのだ。

そうセザールを得ないのだ。

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