僕は物心ついたときから、サンタクロースや幽霊といったものを信じたことがなかった。
クリスマスイブの夜には遅くまで起きていて、なんとか親がプレゼントを置いているという証拠をつかもうとしていたし、たまたま真夜中に目が覚めた日には、誰もいない真っ暗な部屋へ行き幽霊などいないことを確認していた。
科学的に証明できないものはこの世には存在しないことを僕は知っていた。
あるいは、僕はスポーツが得意でサッカーが好きだったが、サッカー選手にはなれないと思っていたし、絵を描くことも得意で、よく自分の絵で周りの大人たちを驚かせていたが、それでも漫画家にはなれないと思っていた。海外に住んだり、会社を作ったりする人間というのも特別で、それは自分ではないと思っていた。
そう、可能性というのは限られていて、世界はとても狭くつまらないもので、自分は子供ながらにそれを理解しているものだと思っていたのだ。
だが、中学生くらいの頃にテレビを観ていて、僕は衝撃を受ける。
なんとサンタクロースは実在したのだ。
世界にはサンタクロース協会というものがあり、サンタクロースの資格を持った人たちが、世界中の子供たちにプレゼントを配っている映像がテレビでは流れていた。
たしかに幼い頃に教えられたように、空を飛ぶソリには乗っていないし、煙突から入ってくることもない。
だが、サンタクロースという資格があり、サンタクロースとしての活動をしている人たちがいるということは、これはもうサンタクロースは実在すると言えるだろう。
こういうやり方があったか。
考え方を変えるだけで、可能性は広がるということを僕は知った。
自分は世界のことをわかった気になっていたが、世界にはまだまだ僕の知らない現実があったのだ。
そして、その時から徐々に、実はこの世界は僕が想像していたよりも、面白い世界なんじゃないかと思うようになった。
その後、僕は海外に住んだし、起業もした。たまにイラストを描く仕事もしている。
大体何でもできるようになった僕だが、全てがうまくいくなんてことはなく、当然うまくいかないときもある。
いろんな所へ行き、それなりにいろんな経験をしたが、それでも世界にはまだまだ僕の知らないことが山のようにある。
そしてこの先、良くも悪くも僕の想像を遥かに超える出来事というのは起きるだろう。
不可能だと思っていたことが、実は可能だったりもする。
可能性は無限大だ。
そう、だからおもしろい。